【コラム】インフルエンザの治療薬について

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【コラム】インフルエンザの治療薬について

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こんにちは。鈴木内科・糖尿病クリニックの鈴木です。

この時期になりますと、インフルエンザのワクチン接種が増えていることと、先日、インフルエンザ治療薬の取材を受けましたので、インフルエンザ治療薬について書きたいと思います。

注目されているのは、ゾフルーザ®でしょうか。2018年3月に発売されたばかりなので新しいです。他の治療薬と違う作用機序で、1回の服用で治療が完結するというのが特徴です。もちろん、登校や出社可能なのは、以前と一緒で「発症後5日間かつ解熱した後2日を経過するまで」です。実際、3月ではインフルエンザの流行は終わっていたので、2018冬~2019年春のシーズンに初めて使用された場合が多かったと思います。推計550万人に使用されたようです。今シーズンはといいますと、そこまで使用されるか分かりません。各先生方も迷っているのではないでしょうか。

というのも、10月に日本感染症学会から、12歳未満の小児に対しては慎重に投与を検討するという提言が公表されたからです。日本小児科学会も同様に、12歳未満の小児に対するゾフルーザ®の積極的な投与を推奨しないと2019/2020シーズンのインフルエンザ治療指針で言及しました。理由として、耐性変異ウイルスの出現頻度が高く、それによって罹病期間が長引いたり、ウイルス排泄遷延化が認められたことを考慮したとしています。

しばらくは様子を見ながらということになります。もちろん、新しい作用機序なので他の薬に耐性がありそうな方ですとか、1回の服用しかできなそうな場合などケースに応じてかと思います。

やはり世界的に1番エビデンスのあるのはオセルタミビル(タミフル®)になります。罹病期間短縮の他、合併症(肺炎やインフルエンザ脳症ですね)防止も証明されています。1日2回の内服で、5日間服用というのが難しいところですが、ジェネリック(後発医薬品)も発売されていて薬価が安いという点も良いですね。予防投与も可能です。

同じ1回の服薬で治療が完結するものに、ラニラビル(イナビル®)というものがあります。こちらは吸入です。1回の吸入で済むというのは魅力的ですが、確実に吸入できる必要があります。2019年6月に吸入懸濁用(ネブライザーを用いて吸入します)が発売されたので、今年からは使用頻度が増えるかもしれません。実は私は、1回吸入というのが気に入っていたので、昨シーズンまでイナビル®の処方が1番多かったのですが、今年はイナビル®の他、タミフル®、ゾフルーザ®、それぞれ患者さんと相談しながら使用してみようと思っています。

他にリレンザ®という吸入薬やラピアクタ®という点滴の薬があります。点滴薬は入院例などで基本的には使用されます。

もともとインフルエンザウイルス感染症はself-limitedな疾患であり、対症療法のみで軽快することもしばしばあります。全ての方で抗ウイルス薬が必要あるのか?という問題もあります。効果の期待できる発症早期や、重症化を防ぐ目的で薬が必要な場合はあるかと思いますが、重要なのは安静や十分な水分摂取と睡眠かと思います。