【コラム】低血糖に関して

トピックス

【コラム】低血糖に関して

お知らせコラム

こんにちは。鈴木内科・糖尿病クリニックの鈴木です。

糖尿病は尿に糖が出ると言われていますが、実際は血糖値が高いことで種々の問題を引き起こす病気です。ですから低血糖は逆の病態なので関係なさそうに思われるかもしれません。

しかし、日本国内における重症低血糖が原因と考えられる救急搬送は、推計で年間約2万件発生しているとされています。

また、平成29年9月からの改正道路交通法では、無自覚性低血糖が起きてしまい運転に支障のある可能性がある場合は、免許の取得や更新の時に申告が必要であり(道路交通法施行令第三十三条の二の三)、虚偽の申告をして免許を取得・更新した場合には罰則が適用されることとなっています(道路交通法第九十条の一)。

低血糖は生活に関係のある身近な問題です。

低血糖症の定義は、低血糖症状が存在し、その際の血糖値が60mg/dl以下の場合です。通常ですと、60mg/dl以下で自律神経症状(発汗・振戦・動悸・頻脈・不安感・めまい・頭痛・かすみ目などです)、50mg/dl以下では脳の栄養源であるブドウ糖の低下により中枢神経系機能の低下による症状(思考力低下・異常行動・けいれん・記銘力低下などです)がでます。ただしこれは糖尿病でない方で、普段200や300といった高血糖が続いている方は、100mg/dlくらいでも低血糖症状が出現する可能性はあります。

低血糖症が確認された場合、次のstepは反応性低血糖症でないかを確認します。反応性低血糖というのは、空腹時ではなく、食後5時間以内にのみ認める低血糖です。食後なのになぜ?と思われるかもしれません。反応性低血糖は胃の切除後の方や2型糖尿病の初期で認められます。胃切除後では食べたものが胃に溜まらず、すぐに小腸にいってしまい急激に血糖値があがります。その血糖上昇に対してインスリンが分泌されるので食後30分や1時間で血糖値が下がりすぎてしますのです。ですから食事を小分けにしてもらったり、糖の吸収を遅らせるお薬を服用してもらったりすることにより改善します。2型糖尿病の初期というのは、インスリンが少し遅れてでてくるのです。血糖上昇に対して遅れて、人によっては多めにインスリンが分泌され、血糖値が下がってきたあとにも遅れてでてきた、もしくは多めにでてきたインスリンの効果で血糖値が下がってしまうのです。これは食後3-5時間ごに生じます。こちらも食事も炭水化物、糖質(食後の血糖上昇のメインです)を控えめにしていただいたり、食事の最後の方に摂って頂いたり、糖の吸収を遅らせるお薬を用いたりします。糖尿病と診断された場合はインスリンの分泌を少し早めるお薬を用いたりもします。反応性血糖の糖尿病の初期の方は、若い方にも多く、気を付けたいところです。低血糖なのに、糖尿病の初期とは思いませんもんね。

反応性低血糖でない場合は、薬剤性低血糖(低血糖をきたすお薬が多く報告されています)や二次的に低血糖を起こす疾患(いろいろなホルモンの病気や肝蔵・腎臓の疾患・神経性食思不振症などがございます)を考えます。それでも特に異常がない場合は、自分でインスリンを多く出してしまうインスリノーマという腫瘍などをチェックします。

我々も注意していますが、インスリン注射や糖尿病のお薬で低血糖をきたしている方も多くいます。低血糖は慣れてくると無自覚になり危険です。夜間のみ低血糖を起こしている場合もございます。低血糖は、重症であれば昏睡など分かりやすい症状がでますが、日々の少しの低血糖は糖尿病の合併症(網膜症や神経障害)の悪化や認知機能に良くないことが分かっています。

今後も低血糖をなるべく起こさないように、それでいて高血糖でも困らないようなコントロールを目指していきましょう。

今回の内容は難しい点もあるので、受診時など気軽にご相談ください。